HOME > レビュー > ドルビーアトモスが配信でも楽しめる。ビデオマーケットの視聴室で、その実力を体験
高品質な動画配信を標榜するビデオマーケットが、新しい試みをスタートした。これまで多くの動画配信はAACなどの圧縮音声で、しかも2chが中心だった。ビデオマーケットはそこにも手を入れ、昨年9月からドルビーアトモスとドルビーオーディオ(ドルビーデジタルプラス)による配信をスタートしたのだ。ネット配信によるオブジェクト再生の効果はどれほどのものなのか、同社シアタールームで、さっそく体験してみた。(編集部)
良質な映像パッケージの制作を続けている「シネフィルWOWOW」の山下泰司さんが本誌連載で折に触れお書きになっているように、音楽ソフト同様、映像コンテンツのパッケージソフト・ビジネスがかなり難しい局面を迎えているようだ。イニシャル(初回出荷枚数)が一頃の半分以下などという話を聞くと、中学生の頃からレコードを買い続け、レーザーディスク〜DVD〜ブルーレイ〜UHDブルーレイを応援し続けてきた月刊HiViに創刊から関わってきたぼくなど、なんともいたたまれない気持ちになる。
いっぽうでネットフリックスに代表されるインターネットを使った映像配信サービスは順調に立ち上がっているようだ。映像・音楽ともに「パッケージからデジタル(配信)へ」という流れは、もう誰にも止めることはできないのかもしれない。しかしそこで問題となるのは、言うまでもなくクォリティである。最新パッケージソフトに迫る、大画面テレビで観るにふさわしい画質・音質をVOD(ビデオ・オン・デマンド)に求めたい。そうでなければ、熱心なAVファンであるパッケージソフトのコアユーザーを取り込むことはできないだろう。そんな視点でクォリティ改善に邁進している我が国発の映像配信サービスがある。それがデジタルレンタル・セルサービスを運営する「ビデオマーケット」だ。
同社が推進している高画質映像圧縮技術「ウルトラ・ハイ・クォリティ(UHQ)エンコード」については本誌上で紹介されたことがあるが、今度の話題は映像ではなく音声。トップスピーカーを用いる最新3Dサラウンド音響技術「ドルビーアトモス」のサービスを開始したのだという。そこで東京都港区にある同社を訪問、取材させてもらうことにした。
TV放送を超えるスペック! 動画配信ならアトモスも楽しめる
●ドルビーアトモスの配信作品
『ラ・ラ・ランド』
『貞子vs伽椰子』
『ジョン・ウィック:チャプター2』
●主なドルビーオーディオ(DD+)の配信作品
『エイリアン・コヴェナント』
『ベイビー・ドライバー』
『スパイダーマン:ホームカミング』
『メッセージ』
『美女と野獣』
『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』
『怪盗グルーのミニオン大脱走』
『トランスフォーマー/最後の騎士王』
『カーズ/クロスロード』
『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』
『ワイルド・スピード ICE BREAK』
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
『君の名は。』 ほか
※いずれも2018年1月26日時点。
タイトルをクリックすると各作品の詳細ページに移動します。
ふだんは社員の休憩スペースとしても利用されているという40帖ほどの広い同社新視聴室には135インチの巨大スクリーンが張られていて、エプソンのフルHDプロジェクターEH-TW6600Wの映像が投写できるようになっている。DVDよりも低い10Mbps以下の転送レートの1080p映像を135インチまで拡大して投写するなんて、そりゃなんぼなんでも……と思ったが、その画質は予想ははるかに超える良質なものだった。
サラウンド再生システムは、メインスピーカーにJBLのK2 S5500を起用したセンターレスの6.2.4構成。JBLの46cmドライバーを装填した2基のサブウーファーがスクリーン下に設置されているのが目を引く。天井に4本設置されたトップスピーカーはBOSEの77WERだ。AVセンターはパイオニアSC-LX89で、メインスピーカーとサブウーファーはアキュフェーズの業務用パワーアンプで駆動するという本格仕様の再生システムが組まれている。
現在ドルビーアトモス音声付で同社から配信されている作品は、ハリウッド大作の「ラ・ラ・ランド」と邦画ホラーの「貞子vs伽椰子」の2本(編集部注:1月26日時点で『ジョン・ウィック:チャプター2』が追加されました)。両タイトルの一部をこの再生システムでチェックしてみた。トップスピーカーを用いた3D音響効果がわかりやすかったのは「貞子vs伽椰子」。呪いの家の階段から降りてくる伽椰子の気配をトップスピーカーとサラウンドスピーカー間を移動する軌跡で表現するなど、その音響演出は緻密で、こりゃホントに怖い! ホラー映画が苦手なぼくは「もうそのへんで勘弁して!」とギブアップ。ホラー演出におけるドルビーアトモスの可能性の一端に触れた思いがした。
「ラ・ラ・ランド」は「貞子vs伽椰子」ほど誰にでもわかる明瞭なオブジェクトオーディオ効果はない。しかし、音楽がすばらしいクライマックスのミュージカル・シーンの立体的に広がる音場効果など大画面映像に負けない魅力があり、何度も観たシーンなのに、引き込まれて見入ってしまったのだった。
社内に135インチ&6.2.4シアターを準備。
ここで画質・音質をチェックしている!?
主な視聴システム
●再生デバイス:アマゾンFire TV
●AVセンター:パイオニアSC-LX89
●パワーアンプ:アキュフェーズ
PRO-5(フロントL/R用)
PRO-10(サブウーファー用)
●スピーカーシステム:
JBL K2 S5500(フロントL/R)
KEF Q90(サラウンドL/R)
パイオニアS-101(サラウンドバックL/R)
BOSE 77WER×4(トップフロントL/R、トップリアL/R)
JBL 46cmPA用サブウーファー×2(パッシブ型)
●プロジェクター:エプソンEH-TW6600W
●スクリーン:シアターハウス(135インチ/16:9)
同社テクノロジーセンターの神保栄一さんによると、このドルビーアトモス音声の圧縮フォーマットはドルビーデジタルプラスで、転送レートは448kbps。通常の5.1ch音声のそれは192kbpsとのことなので2倍以上の余裕があり、ドルビーアトモス音声は音響効果のみならず音質面でも有利だという。ビデオマーケットのVODは都度課金システムが採られているが、このドルビーアトモス音声付映画作品は通常のフルHD映画と料金は変わらず、1本540円とのことだった。
さて、この2作品は同社独自の高画質映像圧縮技術「UHQエンコード」は施されていないそうだが、これまで体験してきた低レートVODで見られたような圧縮ノイズや動きのガタつきが目立たず、135インチ再生でも大きな瑕疵を感じることはなかった。しかしどうせならUHQエンコード作品も見せてほしいとお願いし、同処理された「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」と「ちはやふる」の2作品をソニーの75型液晶テレビKJ-75X8400Cで見せてもらったが、斜め線のスムーズさやノイズの少なさ、色合いの自然さ、情報量の豊かさなど10Mbps以下(ブルーレイの約5分の1程度)で配信されているとは思えない高画質だった。
ビデオマーケットの利用者はタブレットやスマホで楽しむユーザーが多いということだが、これはぜひ大画面テレビで楽しむべきサービスだと確信した。今後はより圧縮効率の高いHEVCでのエンコードを予定しているという(現状はMPEG4 AVC)。ぜひ熱心なAVファンであるパッケージソフトのコアユーザーを取り込めるサービスに成長していってもらいたいと思う。
アトモス配信は、3つの再生機で対応。気になる方はホームページをチェック
ビデオマーケットは、19万本(2018年1月時点)以上の作品数を誇る、都度課金型の動画配信サービスだ。月額500円(税別)で付与される540ポイントで好きな番組を楽しめる「プレミアムコース」と、約25,000本が見放題になる「プレミアム&見放題コース」(月額980円、税別)がある。スマホ、タブレット、TVと様々なデバイスで視聴できるが、今回紹介したドルビーアトモスやドルビーデジタルプラスのコンテンツは、Android TV、4K対応Fire TV、Chromecastのいずれかを対応AVセンター等につないで再生することになる。加入方法等の詳細はこちらのホームページをチェック。(編集部)
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