HOME > スペシャルレビュー > 音楽の表現にいちばん大切なことは何か? その問いに応えてくれるスピーカーケーブル --「GOURD」3製品を聴く
2013年7月16日/山本 浩司
東京都板橋区に本拠を置くひさご電材株式会社が展開するオーディオアクセサリー・ブランド、「GOURD(ゴード)」 。オーディオ用製品として、現在ASSENBLAGE(アサンブラージュ)、CORD(コード)、ELLEMENT(エレメント)、G LINE(Gライン)、NUMERO(ヌメロ)という5 つのシリーズを展開している。ちなみにGOURD の狙いは、アーティストとリスナーの距離を縮めること、だそうだ。ここでは、そのGOURDのスピーカーケーブル3種類をテストしてみた。CORDシリーズのGCS-600とGCS-900、それにG LINEシリーズのGS14014 である。
オーディオケーブルの性能を決定づける三大要素は、導体と構造、それにシールド方法だと筆者は考えるが、ゴードのケーブルはシリーズごとに導体を選択し、構造を変え、それぞれの狙いに合せた音質チューニングを行なっている。製品の価格によって投入できるコストには当然違いがあり、製品グレードによってやれること、やれないことが生じるわけだが、GOURD のケーブルはまず聴感によるチューニングを繰り返すことで製品の完成度を高めているようだ。また、同社担当者によると、音を仕上げるうえでまず心がけているのは、長時間リスニングでも聴き疲れしない真っ当な帯域バランスだという。ちなみにGOURDのケーブルは、高価な銀線などは使われておらず、高純度銅線など比較的オーソドックスな線材が使われている。
ナチュラルでストレートな音調。懐の深い表現力を持つスピーカーケーブルたち
実際、今回テストした3種類のケーブルは、価格に応じて情報量の多寡や音場のスケール感の大小などに違いが出て、厳然たるクォリティ差が存在することが実感できたが、どのケーブルも総じてクセを感じさせない、ナチュラルでストレートな音調を持っていることがよくわかった。このケーブルはこういう音楽との相性がいいとか悪いとか、そういうことをあまり感じさせないのである。音楽表現にいちばん大切なことは何か、その問いに対する深い知見を有した手練のエンジニアが手がけたことを確信させる、懐の深い表現力を持ったスピーカーケーブルたちであった。
テストは自室で行ない、オクターブ(ドイツ)の管球式モノブロック・パワーアンプMRE220とJBL K2S9900 の間にそれぞれのケーブルをつないだが、3種類のケーブルすべて2メートル用を2組4本用意してもらい、バイワイアリング接続で試聴した。プリアンプは同じオクターブのJubilee Pre 、ソースは主にリン(英国スコットランド)のネットワークプレーヤーKLIMAX DS/K で再生するハイレゾファイルを用いた。
今回のテストでは、ハイレゾファイルの音楽ソースのみを用いたが、3種類のケーブルともに帯域バランスにクセが少なく、中低域の表現力に富んだ、ファンダメンタル帯域が充実した音の傾向なので、ブルーレイなどの最新映画ソースなどとの相性も良好と思われる。ピュアオーディオもAVも、どちらもいい音で聴きたいという方に安心してお勧めできるスピーカーケーブルだということも付け加えておきたい。
▼試聴音源の紹介
ルーマー『ボーイズ・ドント・クライ』(88.2kHz/24 ビット/FLAC)
注目の英国人女性シンガー、ルーマーが70年代に発表された男性シンガー・ソングライターの佳曲をカヴァーした最新アルバム。往年のカレン・カーペンター(カーペンターズ)を彷彿させる、透明感のある美しいアルト、<ミドル・オブ・ザ・ロード>の王道をいく過不足のないバッキングともども聴き心地抜群だ。CDと比較すると、深く沈み込むベースやキックの実在感、洒脱さや軽みを感じさせるルーマーのヴォーカルの上手さの表現でハイレゾがはるか上をいく。試聴に用いたのは、アイザック・ヘイズ作『ソウルズヴィル』。70年代ニューソウルの香気が漂うこの名曲をルーマーは、力みのない涼やかな歌声で、しかもブルージーなムードをたたえて見事に歌いこなしている。
ヘルゲ・リエン・トリオ『Natsukashii』(192kHz/24ビット/WAV)
ノルウェーのジャズ・ピアニスト、ヘルゲ・リエンのトリオによる最新作。収録はオスロのレインボースタジオで、レコーディング・エンジニアは、ECM レーベルで70年代に数々の名作を手がけたヤン・エリック・コングスハウクだ。このトリオ、ヘルゲはもとよりドラマーのクヌート・オーレフィアール、ベーシストのフローデ・バルクともに超絶技巧の持ち主。試聴に用いた『アフリカポルカ』では、スティックではなく、手で直接叩いていると思えるクヌートの妙技がたっぷりと楽しめる。また、透徹した精妙なひびきを生み出すヘルゲのピアノ、豊かなひびきで絶妙なグルーヴ感を醸しだすフローデのベースが生々しく捉えられており、その魅力はハイレゾファイルでいっそう際立つ印象だ。
「GCS-600」
中域の表情が豊かな暖色系サウンド。
ヴォーカルの表現力はふっくらと柔和、表情の変化を精妙に描きわける
OFC(無酸素銅) とPCOCC(一方向性結晶無酸素銅) によるハイブリッド構造の多芯ケーブル。ブランドの音質フィロソフィーがよくわかる、帯域バランスが見事に整った、オーソドックスなサウンドを聴かせてくれるケーブルだ。我が家のリファレンス・システムで聴くその音調は、ワイドレンジ感をことさら印象づけるものではなく、中域の表情がたいへん豊かな暖色系のサウンドだ。音場の広がりは中庸で、拡散型というよりも凝縮型のステレオイメージ。とくに感心したのは、ルーマーのヴォーカルの表現力だ。ふっくらと柔和な表情で声の表情の変化を精妙に描き分けてくれる。ヘルゲ・リエン・トリオの熱のこもった演奏も実に力強く描写する。ヘルゲが左手で叩き出す低音部の厚みのあるひびきやベースの実在感に富んだ鳴りっぷりのよさに聴き惚れた。
スペック
SPEAKER CABLE
GOURD CORD GCS-600
¥49,140/2.0m L/Rペア(税込)
●導体素材:PCOCC+OFC●外径寸法:直径約16mm●ラインナップ: 2.0m,2.5m,3.0m,5.0m,7.0m,10m●備考:端子はスペードとスペード(写真)のほか、スペードとバナナの組合せもあり
「G LINE GS14014」
低く伸びたベース。ダイナミックに広がるストリングス。
楽器のひびきがより緻密に解像される印象
6N(純度99.9999 %銅線)とAgA(銀メッキ軟銅線) 、OFC によるハイブリッド7 芯マルチコア構造のスピーカーケーブル。先に聴いたCORD GCS-600 に比べて低域がぐんと伸びたワイドレンジ・サウンドで、音場表現も凝縮型から拡散型へと変貌する。とくに高さ方向の音場の広がりが著しい。ルーマーの『ソウルズヴィル』では、低く伸びたベースがフレームアップされ、聴き応えじゅうぶん。ストリングスの広がりもダイナミックで、オーディオ的なスリルが俄然増す感じだ。また、ヘルゲ・リエン・トリオの各アクースティック楽器のひびきはより緻密に解像され、音楽をいっそう深く聴き込めるようになる。とくにシンバルなどの金属質のひびきにいっそうにリアリティが付与される印象を受ける。
スペック
SPEAKER CABLE
G LINE GS14014
¥82,950/2.0m L/Rペア(税込)
●導体素材:6N+AgA+OFC●外径寸法:直径約14mm●ラインナップ: 2.0m, 2.5m,3.0m,4.0m,5.0m,7.0m,10m●備考:端子はスペードとスペード(写真)のほか、スペードとバナナの組合せもあり
「CORD GCS-900」
独特の品位と驚くべきスケール感。
音楽の表現が、強く、大きく、あたたかい
今回聴いた3 種類のスピーカーケーブルの中でもっとも気に入ったのがコレだ。中心に6Nを置き、AgA、OFC、PCOCC を加えた4 層構造ハイブリッドケーブルで、ひびきのよさと解像感の高さが両立した深みのあるサウンドを聴かせ、音楽に独得の品位の高さが加わる印象だ。ルーマーの表情豊かなヴォーカルの生々しさは比類がなく、超低域からハイエンドまで素直なエネルギーバランスを感じさせるワイドレンジ・サウンド。ヘルゲ・リエン・トリオの演奏には、驚くべきスケール感が加わり、音楽の表現が強く大きくあたたかい。それゆえ大きな音量で聴きたくなるが、ボリュウムを上げていってもウルサさをあまり感じさせないのだ。見事に整った帯域バランス、音質チューニングの冴えを実感させる超実力派ケーブルである。
スペック
SPEAKER CABLE
CORD GCS-900
¥91,875/2.0m L/Rペア(税込)
●導体素材:6N+AgA+PCOCC+OFC●外径寸法:直径約17mm●ラインナップ:2.0m,2.5m,3.0m,5.0m,7.0m,10m●備考:端子はスペードとスペード(写真)のほか、スペードとバナナの組合せもあり
執筆者プロフィール
山本 浩司(やまもと こうじ)
「月刊HiVi」、「季刊ホームシアター」(いずれも弊社刊行)の編集長を経て、文筆業へ。オーディオとA&Vの最新事情をなめらかなセンテンスで、分かりやすく、ディープに綴る。自宅ホームシアターでは、アナログLPからハイレゾファイル、ブルーレイ3Dまで幅広く取り組むA&Vの達人。
▼問い合わせ先
ひさご電材
電話番号:03-3972-1515
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